アトリエ。
彼女は油絵が得意だった。塗りたくられたキャンバスの凹凸が好きなんだと、熱っぽい表情を見せた。雨に濡れた真っ白なワンピースをタオルで叩きながら、彼女は言った。
「最高に最低な人生を最高にするには、どうしたらいいと思う?」
ミルクティー色の猫っ毛がふわりとこちらを向く。胸がざわついて仕方がない。真っ白な肌も、華奢な体も、大きな瞳も、色っぽい唇も、全てが私を動揺させた。
「キスしてみればいいと思う」
思わず口に出せば、彼女は意地悪そうに笑った。
「してみる?」
ほんのりと色づいた唇は私の唇を簡単に奪った。思わず目を逸らしてしまうほどの一瞬の出来事に、心拍数は数えられないくらいの速度をみせた。
私の頬をそっと触る彼女の髪は、雨で滴っていた。
あの凹凸が好きなんだと、彼女は言った。油の匂いが染み付いた木製の床が、ギシギシとなった。